「ムスビ」は西洋タロットの「恋人たち」。縁を「結ぶ」のムスビ。また、神話におけるムスビとは「産霊（ムスヒ）」のことで、天地万物を生み出す霊妙な力とされる。日本神話の最初、国自体を造り出した神も、タカミムスビやカミムスビというように、「ムスビ」という言葉が使われている。

かつて西洋の恋人のカードには、このムスビのカードと同じく一人の若い男性に、二人の女性が描かれ、二人の女性の美醜や善悪をテーマにして対比されていた。ムスビにおいてもまた、幸せな男女の背後には般若の女性が描かれる。嫉妬と怒りを表す般若だが、必ずしも恋敵ばかりではなく、彼の母親や姉妹などの縁の女性かもしれない。いずれにせよ般若は、『退けられてしまったもの』として、二人の影としてつきまとう。それでも、ムスビの力は二人に作用する。新しい関係性をもたらそうと働く。何かを生み出すために。